【FinTech】生活がどう変わるのか-最新本3冊を読んで
最近、といっても1年くらい前からか、FinTechなるバズワードをしょっちゅう見かけます。
金融機関に勤める者として、そろそろ「FinTech」なるものを自分の頭できちんと整理しないとヤバいと思い始めました。
さっそく職場の近くにある大型書店にいってきたら、入ってすぐのところで大々的にFinTech推しをやっていたので、平積みの3冊を購入。
買ったのは以下の3冊
②FinTech 2.0ー金融とITの関係がビジネスを変える
この記事では3冊すべてではなく、ある程度内容を絞って紹介します。
なぜなら3冊読んで分かりましたが、同じような表紙をしている割には内容に結構差があったんです。
考えてみれば著者のスタンスが異なるため、それぞれの著者が伝えたいFinTechの魅力というものがあるということです。ちなみにベン図で表すとこんな感じ。
今回は赤枠の部分、すなわち①の本を紹介します。
コアの部分と消費者目線の部分です。
というのは、3冊の共通部分(コア部分)こそがFinTechでもっとも知っておくべき知識だと思ったのと、「FinTechで生活がどう変わるか」という消費者目線の考え方は多くの人に有益な知識だと思いました。
ここから本の紹介
◆コア部分
FinTechとは何か
FinTechとは「Finance:金融」と「Technology:技術」をかけあわせた造語であるが、カタカナでは「フィンテック」。そもそもフィンテックは最近になって突如として生まれた言葉でも概念でもない。銀行やコンビニに設置されているATMもフィンテックである。
しかし最近日本で急速に注目されている「フィンテック」は、以前の「フィンテック」と意味合いが異なり、我々の生活や社会全体を大きく変えうる金融サービス、またはそのようなサービスを提供する新興企業(スタートアップ企業)のことをいう。
◇FinTechの定義:金融とIT(情報技術)の融合によって生まれた、新しい金融サービス
◇FinTechを提供する企業:フィンテック企業
FinTechのサービスは大まかに2種類
A 従来からある金融サービスが進化・発展したもの
B フィンテックの発展により誕生した、まったく新しい金融の価値「ビットコイン」
これからそれぞれを紹介していきたいと思います。
A 従来からある金融サービスが進化・発展したもの
①融資
クラウドファンディングや、スタートアップ企業が直接借り手に融資する形態などがある
②決済
クレジットカードの決済サービスを店舗などに導入する場合、専用のカードリーダーが必要だ。その導入にかかる初期費用は、従来なら10万円から数十万円になるという。しかしフィンテック企業を利用すると、実質無料で導入できる場合がある。
また、販売から入金へと現金化されるまでのタイムラグは、最短でも30日、ことによっては60日もお金が寝てしまっていたが、最短翌日で売上代金を入金するフィンテック企業が登場し、ユーザーを奪いつつある。
③送金
送金したい人同士をマッチングさせるプラットフォームを提供するフィンテック企業が登場。通常だと手数料が送金総額の5%程度取られるが、フィンテック企業を利用すれば最大でも0.5%程度で済む場合がある。
④投資
ロボアドバイザーのサービスに注目が集まっている。投資家が投資経験や下落時の考え方などいくつかの質問に答えるだけで、投資家の属性にあったポートフォリオを提示。またそれに沿ったETFなどを投資金額の1%程度の手数料で提供する。
⑤情報管理
PFM(Personal Fiancial Management)と呼ばれる自動家計簿サービスをいう。従来、家計簿はノートにつけたり、エクセルにインプットしていた。そこえフィンテック企業が既存の金融機関と連携し、カードの支払いや銀行の入出金などを自動で計算し、見える化するサービスを生み出した。
またスマホ内蔵カメラの発達の影響も大きく、レシートを写真に写すだけで、ガス料金、電気料金などを自動識別して公共料金カテゴリーに振り分けてくれる。
なおこのような情報統合サービスは、その前提として自動家計簿サービス(アプリなど)が既存の金融機関と情報を連動させている必要がある。この連動させるためのシステムに関する規格のようなものをAPI(Application Programming Interface)といい、フィンテックでは注目を集めるテクノロジーのひとつ。
⑥業務支援
PFMの法人版、クラウド会計。
⑦その他
保険、不動産、セキュリティ、金融に特化したメディアなど、幅広いフィンテックが存在する。
B フィンテックの発展により誕生した、まったく新しい金融の価値「ビットコイン」
ビットコインの表現として良く引用されるのは、Marc Andreessen氏の言葉「1975年のパソコン、1993年のインターネット、それに続くイノベーションが2014年のビットコインだ」。ビットコインは上記のような「従来の金融サービスの進化・発展系」ではなく、ビットコイン(およびそれを可能にする技術)は突然変異で生まれた「飛び地」の存在である。
bitcoin
ビットコイン(bitcoin)はオンライン上で流通する仮想通貨の一種で、通常の通貨のように支払い手段としても利用することができる場所もある。表記単位はBTC。
なお仮想通貨は数千種類あるといわれている。
MTGOX
2014年2月に破綻した、当時では世界最大級のビットコイン取引高を誇っていた取引所。
マウントゴックス事件は証券会社を思い浮かべるとわかりやすい。日本で証券会社を利用するとき、日本円を証券会社の口座に入れて株などの売買をおこなう。マウントゴックスも、ユーザーがビットコインを売却したときの売却代金や購入するための資金に加えて、ビットコインそのものも預かっていたが、それを横領した罪で社長が逮捕されている。
したがって、MTGOXはビットコインではなく、ビットコインそのもののの安全性に大きな影響を及ぼすものではない。大手証券会社が顧客の口座の金に着服しても、円などの通貨の信用がなくなるわけではないのと同様。
なお取引所に登録性を導入するなど、仮想通貨に対する規制を盛り込んだ改正資金決済法が6月25日に成立したばかり。これまでは仮想通貨を公的な決済手段と位置づける法規制はなかった。
blockchain
カタカナで「ブロックチェーン」。ビットコインの安全性を支えている技術で、暗号技術を組み合わせて構築されたもの。暗号セキュリティの技術であるため、当然ながらビットコインとイコールではない。ブロックチェーンの代表的な応用事例がビットコインというだけのことである。
ブロックチェーンの信頼性は高く、ビットコインの改ざんは今まで行われたことはない。この安全性が注目され、現在ではブロックチェーンを金融以外の分野に応用する動きも出てきている。
◆消費者目線の考え方
消費者目線、というか一般市民目線で考えると「じゃあ一体生活がどのようにかわるんですか」ということになる。
本書によると次の5つの影響が考えられる。
1.金融サービスが身近になる
モバイル機器で利用できるサービスが多くなることで、どこでも金融サービスを受けられるようになる。フィンテックによって金融業がサービス業化し、その流れのなかで事業会社と金融機関の連携が増えるからだ。何かモノを買おうとしたときに手持ちの現金もクレジットカードも電子マネーもなくても、見えない所で融資が行われ、翌月の給料で天引きされるサービスが勝手に進んでいく。
また決済領域が最終的に行きつく先は、シームレスなサービスになるだろう。テレビを見ていてほしい商品が出てきたら、そのまま購入画面に遷移しすぐに決済まで進む。街を歩いていてほしい商品を見つけたら、それを写真に撮るだけで解析されショッピングサイトを表示することができ、そのまま購入・決済を済ませられる。そんな時代が遠からず訪れるかもしれない。
ただし気を付けなければならないのは、プリセットされている金融サービスが最も効率のいい条件とは限らないことだ。金融リテラシーの高い人は、プリセットされているサービスを断り自ら適切なサービスを探すだろう。その結果、リテラシーの高い人はより安いコストで調達できる一方で、リテラシーの低い人はサービス提供者に囲い込まれていたという事態にもなりかねない。
2.金融サービスの選択肢が増える
資金調達面や資産運用面などで、今までにない金融サービスが出現する。
例えば資金調達面ではクラウドファンディングも新しい選択肢の一つだ。ある新聞記事では、中学生が興味のあるプログラムに参加しようと思ったら、費用が数十万円かかるという。自腹では難しいのでクラウドファンディングで募ったところ、資金が集まってプログラムに参加できるようになったという。
これまでの常識では中学生は融資は受けられなかった。お金がないという理由であきらめなければならなかったチャンスを、新しい金融サービスが可能にしたのだ。この事例はフィンテックに詳しくなり、さまざまな選択肢があることを知っておくことで、さまざな機会が得られることを示唆している。
資産運用面でも、前述のとおり、ロボアドバイザーがある。これまでは、限られた情報の中から株式などに投資していたが、新たな投資先に相対的に低いコストでの運用が可能となる。
3.金融サービスの選び方が変わる
一般人にとっても日々の情報収集が重要になってきている。今やオンライン上に情報の「入手先」と「相談先」は増えており、金融サービス選定時のプロセスも変化してきている。
今後フィンテックにより金融サービスの多様化が加速するなか、自ら積極的に情報を集め検討できる人が得をするシーンがこれまで以上に多くなるだろう。一方で「フィンテックなんて私には関係ない」と考える人は金融機関に囲い込まれていく。
4.金融サービスに対する守り方が変わる
金融機関と事業会社、金融機関とフィンテック企業などの提携が増えていくので、これまで点在していた情報がつながっていく。あらゆる消費行動や嗜好情報が集められてビッグデータとして分析されるようになる。
それを便利と思う人がいる一方で、自分の知らない所で自分が分析されることに嫌悪感を抱く人が出てくるだろう。加えて個人情報の漏えいリスクはつきまとう。フィンテックで人々がより金融に近づくことによって、さらにこうしたリスクがフォーカスされることになる。
5.金融サービスの未来が変わる
「デジタルネイティブ」「ミレニアル世代」と呼ばれる若者たちが台頭してきたが、今後はむしろこうしたユーザーが多数派になってくる。彼らはオンライン上において、たとえ金融サービスであろうと、サービスの使い心地やより良い条件で選び、金融機関にはこだわらない。
また、仮想通貨に代表される「デジタル化」により「お金そのものの存在意義や、リスクを仲介すべき金融業の意義についても問われていくことになりそうだ。
【ひとこと感想】
金銭的に損することを回避でき、また詐欺被害などから自分を護ることができる。
フィンテックの動向を定期的にみておくことは、金融リテラシーを高めるということと同じですね。