PISA金融リテラシーの能力レベルは5段階。その中身とは?
PISAとは、OECDが世界の15歳を対象に実施している能力評価テストです。
その科目のひとつ「金融リテラシー」。
公式サイトでは英語の説明があって、誰かが訳していたらいいな♬
と思ったのですが、残念ながら適当なものはなく...めっちゃ重い腰を持ち上げて訳してみました。
英語が得意な人なら大したテキスト量ではないと思うんですけどね~
直訳はわかりづらいので、伝わりやすさを意識して意訳しています。
誤訳はご指摘をいただければ幸いです。
Level5まで到達していると感じた方は、自由に生きていく金融リテラシーをすでに持っているといえるでしょう。
PISA金融リテラシー、今後もう少し深掘りしていきたいと思います。
PISA金融リテラシーで測る能力5段階
Level1
- 一般的な金融商品や用語が分かり、基本的な金融関連の情報を解釈できる。
- 「必要なもの」と「ほしいもの」の違いが分かり、日常の出費に関する簡単な意思決定ができる。
- 例えば請求書といった金融関連書類の意味が理解でき、個人が経験しやすい場面における基本的な計算(足し算、引き算、かけ算)に応用できる。
Level2
- 一般的な金融商品や、一般的に使われている用語や概念の知識を応用し始める。
- 与えられた情報が直接関連する場面では、その情報を意思決定に活かせる。
- おカネの簡単なやりくりを理解し、日常の金融関連書類の特徴を解釈できる。
- 1回の基本的な計算(割り算を含む)を応用して、金融の質問に回答できる。
- 「(すでに使用した)出費額」や「(これから発生する)コスト負担」といった、異なる要素の関係に理解を示す。
Level3
- 一般的に使われている金融概念や用語、また金融商品の理解を、それらに関連する場面で応用できる。
- 意思決定がもたらす結果を考慮し始め、なじみのある場面では簡単な資金計画を立てられる。
- 幅広い金融関連書類について簡単な解釈ができ、さまざまな基本的な計算(パーセント計算を含む)に応用できる。
- おカネのやりくりといった、金融リテラシーを用いる比較的一般的な場面において、日常的な問題を解決するために必要な計算を選択できる。
Level4
- 成人になるまでの段階で、銀行口座の管理や預金商品の複利といった一般性の低い金融概念や用語の理解を、それらに関連する場面で応用できる。
- 銀行取引明細書など幅広い詳細な金融関連書類を解釈かつ評価することができ、また一般性の低い金融商品の効用を説明できる。
- 長期的なローン返済に伴う総コスト負担の理解など、意思決定が長期的にもたらす結果を考慮できる。
- そして金融リテラシーを用いる一般性の低い場面において、日常的な問題を解決できる。
Level5
金融教育プログラムのカバー範囲が広すぎる件
前回の記事の最後で「平易な内容の副教材について探っていく」と書いたものの、いったいどんなジャンルについて考えていけばいいんでしょうね。
いかんせん、金融教育はローンや保険といった金融商品から株式・債券のリスクリターンのような投資理論、加えてお金の大切さのような道徳まで、教育範囲がハンパなく広い。
金融教育プログラム-あるべき金融教育の姿を236項目に細分化
こんなとき、文科省なら…文科省ならきっとなんとかしてくれる…!
と思ってウェブサイトを調べたら、ピッタリのものを見つけました。文科省じゃないけど。
金融広報中央委員会が2015年3月に公表した「金融教育プログラム」というものです。
金融教育プログラム「学校における金融教育の年齢層別目標」 : 知るぽると
学年別・分野別に習得すべき項目が表でまとめられている。素晴らしい!
大分類が全部で4つ、それを13の小分類(236項目)。
ここではとても紹介しきれないので、大分類と関連する用語のみ紹介します。
- 生活設計・家計管理ー資金管理、ローン、保険、金利、リスク・リターン、他
- 金融経済の仕組みーお金の役割、金融機関、中央銀行、為替、納税義務、他
- 消費生活・金融トラブルー商品の比較・選択、契約の基本、クーリングオフ、他
- キャリア教育ー勤労の意義、ニート、将来の夢、持続可能社会、社会貢献、他
金融教育プログラムはカバー範囲が広すぎる
これでどのジャンルを金融教育と考えていけば良いかが分かりました。
分かったのはいいけど、正直項目が多すぎます。
上で列挙した用語では、細かい部分はまだまだカバーしきれていません。
なかには人間教育・生活教育といったほうがいい項目も。
例えば上に記載していないけど「法令順守による社会の秩序」とか、「ワーク・ライフバランス」とか、「製造物責任」とか。ていうか製造物責任ってなに?
確かにおカネは経済の血液ともいわれるし、人間社会のあらゆるシーンで使われています。
だからといって金融教育のなかで人間力・生活力を養おうとするのはなんか無理があるでしょう。
むしろ昔からある「家庭・生活」のような科目に金融教育も人間教育も含むほうがしっくりきます。
実生活で活かせる副教材のネタ作りをしたいので、「生活設計・家計管理」や「消費生活」といった分野から探っていくことになるでしょうか。考える日々は続く...
先生の心の叫び(ぶっちゃけ金融教育はどこまで進んでいるのか)
ぼくは普段から、もっと多くの人を金融リテラシーを高めて「自由」を手に入れて欲しいと思っているんですが、その詳細については前回の記事で書きました。
では実際の金融リテラシー教育って、ぶっちゃけどこまで進んでいるんでしょうかね?
と思い調べたところ、日本証券業協会が実態調査を行っていました。
調査結果で目に止まったポイントは…
- 「現行の教育計画に余裕がない」80%超
- 「用語・制度の解説が中心となってしまい、実生活との繋がりを感じにくい」50%超
- 「金融経済教育は必要/ある程度必要」90%超
- 「生徒には難しい/教える側の専門知識が不足している」約50%
- 「平易な内容の副教材が欲しい」70%超
うーん、先生方の不満が並んでいて、あまりうまくいってない模様。
ぼくの頭の中で平均像の先生が何かぶつぶつ言ってるのが聞こえてきた。
先生
「いや分かってるよ?金融経済教育が大事だって。賢い消費者になるには金融知識が必要だって。
でも時間がないのよ。自分の知識だって人に教えられるレベルじゃないし、生徒には難しい部分もあるから分かりやすい伝え方を考えなきゃいけないし。
だいたい今だって時間が足りなくて日々大変なのに、さらに勉強しつつ新たな教育計画を立てる余裕なんてあると思う?
それでも金融教育の必要性は強く感じてるから、少しは授業で触れることもあるよ。教科書に少し載ってることもあるからさ。
ただ、その程度で教えられるのは用語や制度くらい。実生活で活かせるようなものじゃないんだよね。
あー、生徒が理解しやすいレベルで、かつ実生活にも応用できるような副教材があったらなあぁ〜!!」
ひとつ誤解のないよう書き添えておきますが、面白くて分かりやすい金融教育を実践されてる先生はきっと何人もいて、上記はあくまで想像上の先生です。
でも、きっと近いことを感じている先生の存在を信じて、副教材のネタを探っていこうと思います。
金融リテラシーを高めたら「自由」になった話
最近、金融リテラシーの重要性をうったえる記事をよく目にします。
その論調はだいたいのところ、
「金融リテラシーを高めて生活力を向上させて、経済的に自立しましょう。」
「さまざまな金融商品や金融サービスを理解して、情報収集を習慣化しましょう。」
「多くの人が金融リテラシーを高めたら詐欺まがいの不健全な金融商品が減って、金融商品全体の質を向上させることにつながります」
という感じ。
正直、こういうのを読んで「じゃあさっそく金融について勉強するぞ♪」なんて人がいるのかって思います。
そんな人がいたら会ってみたいです。いや、やっぱり会わなくていいや...
一般的な反応は、例えば
「金融知識があればトクすることはなんとなくそうかもと思うけど…はっきりいって面倒。それで今の生活が劇的に良くなるわけじゃないし、現状にそれなりに満足してるし、金融の勉強するくらいなら他のことに時間を使いたい。しかも金融商品の質の向上?正直どうでもいい。」
という程度かと。
「金融リテラシーを向上すべき」という主張そのものは正しいんですが、もっと大きくて本質的なメリットがあることを知ってほしいです。
金融リテラシー向上の最大のメリットとは
ここで、金融リテラシーを高める最大のメリットをズバリお伝えします。
それは金融リテラシーを高めたら「自由」になれるということです。
自由というのは金銭的な自由のこと。
自由を手にしてから、ぼくの生活は劇的にではないけど、確実に良くなっています。
「金銭的な自由?金持ちになるってこと?」と思った方、ご安心を!(?)
ぼくは金銭的に自由になりましたが、お金持ちになったわけではないです…全然…あれ目から汗が...
...気を取り直して。
実は、金融リテラシーを身につけることによって、お金に関する判断を納得して行うことが出来るようになります。
そして納得しているから後悔がありません。
例えば家のローンならボーナス支払いや金利の変動の仕方を想定する。そしてその想定通りにならない可能性があることも理解してローンを組む。
子どもならお小遣い帳で収支を把握したうえでおもちゃを買う。
そして、「自分にとって正しい」と判断したものは、一旦頭から離してしまえるんです。
もちろん完全に忘れちゃダメですよ?
頭の片隅には判断した内容を置いておいて、想定外の事態が発生したら、当初のプランを落ち着いて修正することができます。
こうしてお金に関する一つひとつの判断に自分が納得していれば、お金の不安や悩みというものがなくなっていくんです。
なお「収入に不満があって、もっと稼ぎたい」という悩みは金融リテラシーを高めても答えは出ません。
でも「自分の今の収入だと、このようにお金にを使うことが出来る。」という経済的自立を促すことは出来ます。
より多くの人が金融リテラシーを高め、一人ひとりがそれぞらの幸せなお金の使い方を考え、実践する。
少し飛躍したけど、そんな世の中になったらいいなって思います。
まだ金融教育(金融リテラシー教育)=金儲けの教育と思ってます?
すみません、ブログはじめたばかりなのに言い過ぎました。
いまどき金融教育を金儲け教育だなんて思ってないですよね。
それでも「そもそも金融教育なんて知らない」「金儲けのための教育じゃないの?」と思っている人のために。
以下は金融教育の定義の例。
金融教育とは「お金や金融の様々なはたらきを理解し、それを通じて自分の暮らしや社会について深く考え、自分の生き方や価値観を磨きながら、より豊かな生活やよりよい社会づくりに向けて、主体的に行動できる態度を養う教育」である。*1
長いし教科書的な表現だし、意味がスッと入ってこない。
読まなくて結構です(最初にいえよ!)。ひと言でいえばこういうことです。
金融教育とは「金融に関する正しい意思決定を行う能力」を養う教育のことである
ここで「金融に関する正しい意思決定を行う能力」のことを金融リテラシーというんですが、
メディア・リテラシーとか情報リテラシーなどで使われている、あのリテラシーです。
一般的には与えられた情報から必要な部分を取り出して活用する能力と言われています。
つまり金融教育とは金融リテラシーを養う教育のことをいうんです。
私たちは金融リテラシーを日常的に使用している
金融リテラシーなんて聞くと、
「経済学?投資理論?難しいからムリむり無理!!」
のような「お勉強」をイメージするかもしれないけど、実は日常生活で金融リテラシーを使う機会は意外と多いです。
- 毎月のお小遣いを計画的にやりくりする能力
- 車や住宅など高価な買い物を計画的に行う能力
- 将来の必要資金を見据えて、計画的に「金儲けのための」投資を行う能力
こんな感じで、金融に関する意思決定を行うための能力は金融リテラシーといえるでしょう。
ところで3つ目の能力にあえて「金儲け」という表現を使いました。
ここで記事のテーマに立ち返ると、「金融教育は金儲けの教育か?」は、「金融リテラシーとは金儲けの能力か?」とも問い直せます。
正しい目的で計画的に金儲けを行う、これは金融に関する正しい意思決定ですので、金儲けの能力も金融リテラシーの一部であるといえるんです。
大切なのは、何が「正しい」目的なのか?何が「正しい」意思決定なのか?「正しい」ってなんなのか?を考えていくこと。
そのため、金融リテラシー教育を行うにあたっては、道徳や倫理についても考えないわけにはいきません。
金融リテラシーを高めて正しい意思決定を
現代の生活はおカネと切っても切り離せない、すなわち、現代の生活と金融リテラシーも切り離せないってことです。
金融に関する意思決定は、探せば普段の生活にあふれてます。
『正しい』意思決定を行うために、金融リテラシーを高めていきたいですね。